もっとも

大阪というところは妙なところで、中学の入試を国史一課目にしたり、小学校の児童に靴を禁止して、新しく下駄を買わせたりするところなのだから、白米の禁止くらいはやりかねないのかもしれない。国史が大切な課目であること、靴用の皮革を節約しなくてはならないことは、これは言うまでもなく、国策の上からみても明瞭すぎるほど本当のことであるが、それかと言って、それを法令で決めなければならないという結論はすぐは出てこないのであろうと思われる。それではまるで、教育というものは必要のないものであるということを教育しているようなものである。
 
兎の耳(一九三八年十二月)/中谷宇吉郎