流れよわが涙、と警官は言った

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「悲しみは自分自身を解き放つことができるの。自分の窮屈な皮膚の外に踏み出すのよ。愛していなければ悲しみを感じることはできないわ・・・悲しみは愛の終局よ、失なわれた愛だものね。あんたはわかってるのよ、わかってると思うわ。でもあんたはそのことを考えたくないだけなの。それで愛のサイクルが完結するのよ。愛して、失って、悲しみを味わって、去って、そしてまた愛するの。ジェイスン、悲しみというのはあんたがひとりきりでいなければならないと身をもって知ることよ」

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フィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った』